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人が求めるものは千差万別。多くの人に受け入れられる先進技術を提供したい―グローリー代表取締役社長 三和 元純インタビュー

AIと暮らしがつながるIoT、VR(仮想現実空間)、ロボティクス、ドローンなど、次々と登場する先進技術によって、私たちの生活が変化するスピードは日増しに早くなっています。

近い将来、先進技術によって私たちの暮らしはどのように変わっていくのでしょうか。

今回、「生体認証」「キャッシュレス」「ロボット」の3つのキーワードについて代表取締役社長 三和 元純が語ります。

コンビニ、ホテル、病院… 「生体認証」はもっと身近な存在になる

グローリー代表取締役社長三和元純

――まずは1つめの「生体認証」について。顔、指紋、声、静脈といった体にまつわるものを識別・認証する技術は、私たちの暮らしにどう役立っていくのか?

生体認証、とくに顔認証技術については約20年以上にわたって研究・開発しています。これはもともと、グローリーが得意としてきた現金の識別技術を応用した技術です。

グローリーの顔認証技術は、ロボットの接客で反響を呼んだハウステンボスの「変なホテル」に導入されました。ほかにも、書店やスーパーなどの万引き防止や病院の離院防止、マンションの入館システムなどにも採用されています。

生体認証の技術は、今後も様々なサービスへと活用の場を広げていくでしょう。当社においても社内コンビニでの顔認証技術を使った手ぶら決済の実証実験を行っています。

「キャッシュレス」社会に向かっても、現金は必ず残る。いま海外で増えつつあるつり銭機の波

グローリー代表取締役社長三和元純

――続いて2つめの「キャッシュレス」について。最近、コンビニや飲食店でグローリーのつり銭機の導入が増えている。日本政府は2025年までにキャッシュレス決済を4割まで増やす目標をかかげているが、将来的に現金は使われなくなるのか?

私自身は、世の中から現金が消えることはないだろうと思っています。仮に世の中の半分がキャッシュレスになったとしても、半分は「現金を使いたい」「現金しか使えない」という人が残る。やはり現金を扱うためのソリューションは必要なんです。

日本の大手コンビニや小売店には、レジ締め作業において「現金集計に時間と労力がかかる」「金額が合うまで帰宅できない」といった問題がありました。そこにグローリーのつり銭機を導入していただいたことで、新人のアルバイトやパートの方、日本の貨幣に慣れていない外国人労働者など、幅広い雇用を生み出すお手伝いができたのです。

また、キャッシュレス化によって、お店側に何パーセントか手数料の支払いが発生する場合があり、それが原因でキャッシュレス化の導入に二の足を踏むお店が多いのも事実です。

実はいま日本よりもキャッシュレスが進んでいる海外で、格段につり銭機の需要が高まっているんです。

 

パン屋に導入したつり銭機CI-5のイメージ

海外においても日本と同じようにレジ業務における現金管理の厳正化が求められており、スーパーやディスカウントショップを中心に導入が進んでいます。

海外でつり銭機が普及したきっかけの1つにフランスのパン屋さんの悩みがありました。扱っている商品が口に入れる食べものなので、「レジでお金を触った手でパンを触りたくない」という潜在ニーズがあったんですね。そこで、お客さま自身で支払ってもらうつり銭機を導入していただきました。

 

三和元純社長

――本格的に「キャッシュレス」が推進されていくと、どんな課題が出てくるか?

キャッシュレスの導入スピードは、その国の社会的背景やインフラによって変わってくるだろうと考えています。たとえば日本の現金決済は、かなり効率的なシステムが構築されています。日本ではどこでも現金にアクセスすることが可能です。

そんな日本でキャッシュレス化が推進されたとき、店側の意図とは逆に、現金を使うお客さまの満足度が下がってしまうという問題が起こり得るでしょう。たとえば、売店のレジがキャッシュレスと現金で分かれていて、キャッシュレスの列はスムーズに進んでいくのに、現金の列はいつまでも進まない、といったことです。

私たちグローリーは現金決済とキャッシュレス、両方の課題についてソリューションを提供していきたいと考えています。キャッシュレスの先端技術だけを追い求めるだけでは、地に足のついた事業にならず、企業の強みを失ってしまうような気がするのです。

海外からの視察が絶えない埼玉工場。ロボットと人は共存共栄の関係

グローリー代表取締役社長 三和 元純

――3つめの「ロボット」について。グローリーが展開するロボットSI(システムインテグレーション)事業は、どんなビジョンを抱いているか?

いまグローリーの埼玉工場では23台のロボットが人と同じラインに並んで製品を作っています。この協働ラインは国内外から注目を集め、多くの海外の企業やメディアのほか、安倍首相も視察に来てくださいました。

グローリーでは2017年にロボットを扱うSI事業をスタートさせました。自社工場で培った生産技術力やノウハウを事業化し、ロボットを導入しようとしている企業の支援をしようと考えたのです。

これにより、問題となっている人手不足解決の一助にも繋がっていくと思います。

 

ロボットと人間としても働く埼玉工場の様子

ロボットSI事業が提供する主なソリューションとして、製品のユニット組立と検査作業、ピッキング(物をつかむ、集める)とパッケージング(梱包)があります。

ロボットと聞くと、「人の作業をすべてロボットに置き換える」というイメージを持つ方が多いかもしれませんが、そうではありません。私たちが目指しているのは、人とロボットが同じ空間で一緒に作業する環境です。

人が求めるものは千差万別であっていい。多くの人に受け入れられる先進技術を提供していきたい

三和元純社長

――社長ご自身としては、世の中は今後どのように変化していくと考えているか?

技術革新によってどんどん進化していくことで、生活が便利になったり、移動時間が短縮されたり……。もちろんよい面もありますが、私は変わらない方がいいものもあると思っています。

たとえば、私は自動車の運転が好きなんです。でも世の中は自動運転へと切り替わっていく流れになっていますよね。そうなった場合、いままでのようなドライブを楽しむことができるのでしょうか。「なぜ機械に運転してもらわないといけないのか」と感じる人がいるかもしれません。あるいはリニア中央新幹線でいえば、移動時間が短縮できるのはよいとしても、地下ばかり走って外の景色を見ることができない。それで満足感を得られるのでしょうか。

人が求めるものって、千差万別ですからね。「最新技術を使ったバーチャル空間で買いものを楽しめますよ」といっても、それに飛びつく人もいれば、いままでどおりで十分だという人もいるでしょう。

もしかすると、格差社会がいままで以上に広がってしまうかもしれません。そうなると、最新技術を使えない、もしくは使いたくないという人も残るはず。

今後、世界が変化し続けていくなかで、ますます多様性を受け入れる社会が求められていくでしょう。

もちろんグローリーの事業としては、技術革新を追い求めていきます。それと同時に、できるだけ多くの方に受け入れられるインフラやサービスを提供していきたいと思っています。これは誰かがやらなきゃいけない事業なんです。

 

三和元純社長

三和 元純 社長プロフィール

1954年生まれ、兵庫県出身。1977年、大阪大学経済学部卒業。太陽神戸銀行(現・三井住友銀行)入行。2009年、グローリー入社。2017年、代表取締役副社長就任。2019年4月1日、代表取締役社長に就任し現在に至る