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今話題の“顔認証システム”とは? その仕組みと特徴、今後の課題

指紋認証、静脈認証、虹彩認証……。スマホのTouch ID、銀行など、日常生活で生体認証技術を使う機会が多くなってきていると思いませんか。なかでも、顔認証はここ数年で飛躍的な進歩を遂げ、注目されています。

顔認証は、顔を撮影するカメラがあれば、何かに直接触れることなくカメラの前に立つだけで本人確認できるのが大きな特徴。

実は、グローリーでも、顔認証システムを開発しています。今話題の顔認証システムはどんなところで、どのように使われているのか、その仕組みと特徴、今後の課題について、紹介します。

顔認証はこんなところで使われている!

顔認証システムは、私たちの身近なところでも活用されはじめています。書店、スーパー、マンション、ホテル、病院、空港、テーマパーク、一般企業などに顔認証システムが導入されることでより安全・便利になってきているのです。

書店やスーパーの万引き防止対策

時代が変わってもなくなることがない、書店やスーパーなどでの万引き事件。警察庁の統計では、近年、万引き犯は少年少女が2割、高齢者が8割となっていて、全国の書店の被害額を合わせると年間200億円とされています。常習性のある犯罪であることから、再犯率が高いことも特徴です。

そんな万引き防止対策に一役かっているのが顔認証システム。過去の万引き犯の顔画像データを「不審者」として登録することで、店舗の来訪者の中から登録されている「不審者」を検知した際に、管理者へ通知、「不審者」に対して警戒を強めることで再犯防止の手助けをしています。

最近では2019年7月に始まった「渋谷書店万引き対策共同プロジェクト」に、グローリーの顔認証システムが導入されました。同じ地域のライバル店である書店同士がタッグを組み、渋谷で繰り返される万引き犯のデータを共有するという初めての試みです。

ホテル・マンション入口ドアの自動解錠

寝てしまった子どもを抱いてホテルの部屋に戻ってきたときや、荷物を両手に持って帰宅したとき、鍵やカードを使わずに解錠できれば非常に便利ですよね。それを実現しているのが、顔認証システムの技術を導入したホテルやマンションです。

入口ドアにあるカメラに映った顔と、事前に登録しておいた顔の画像データが認証されれば、自動で解錠される仕組み。利便性とセキュリティを兼ね備えているのが顔認証システムのメリットです。

グローリーの顔認証システムは、ハウステンボスのオフィシャルホテル「変なホテル」や、タワーマンションなどで導入されています。

入院患者の事故予防

顔認証は病院でも活用されています。グローリーでは離院事故予防システムを提供。これは見守りが必要な入院患者様が、意図せず病院外へふらっと出てしまったときに、院内に設置した顔認証カメラが検知して、リアルタイムで個人を特定。メールなどで居場所を知らせるアラート通知を行うというものです。

医療関係者の人手不足が叫ばれている今、顔認証の導入により労働負担の軽減に役立てることができます。

そのほか顔認証システムの活用事例

・空港の顔認証ゲート
日本の一部の空港でも顔認証ゲートの導入が始まっています。顔データとパスポートの照合をスムーズに行うことで空港の混雑緩和に役立っています。

・テーマパークの入場ゲート
顔認証はエンタメ領域にも広がっています。一部の大規模なテーマパークでは顔認証ゲートシステムを導入。入場時の待ち時間を短縮できるようになりました。

・会社内のプリンター利用認証や入館システム
ビジネスの現場では社員証などICカード、パスワードの手入力といった本人確認の代用として顔認証が普及し始めています。社員証の紛失やなりすましを防止でき、工場などで首から下げたICカードが機械に巻き込まれる危険性を回避することに役立っています。

・スマートフォン、パソコンの画面ロック解除
スマートフォンやパソコンのロック解除にも顔認証は採用されています。一般的に身近に体験できる顔認証といえるでしょう。

実はまったく別物。顔認識と顔認証の違いとは?

顔認証技術のイメージ

顔認証とよく似た言葉に顔認識があります。この違いはご存知でしょうか?
顔認識とは「検出」を行うことです。まず背景や物が混在する画像データから顔領域を抽出。続いて顔の特徴を検出し、その人固有の顔データを作ります。

イメージしやすいのは、デジタルカメラやスマートフォンのカメラで顔を検出する機能でしょう。一般的なデジタルカメラは、画像から輪郭、目・鼻・口などの位置関係をもとに顔を検出し、そこから性別・年齢・表情などを識別します。そのあと顔にピントを合わせ、笑顔になったらシャッターを切る、といった動作を行なっています。

一方、顔認証とは顔認識で検出したデータと、あらかじめ登録されている顔データとを「照合」して、同じ特徴を持つ顔かどうかの「識別」を行なうことです。だれの顔なのかを識別し、本人確認ができればドアの鍵を開けるといった動作を行ないます。

つまり顔認識の「検出」のあと「照合」「識別」の段階を経て顔認証が行われるというわけです。

グローリーの顔認証システムは、画像から顔の100カ所の特徴を検出し、独自のアルゴリズムで作成した平均顔と比較して照合し、だれの顔なのかを識別。顔全体の特徴を利用することで、メガネや帽子などの局所的な変化に強く、加齢による経年変化があっても顔認証を行うことができます。

顔認証の技術はどのように進化している?

では、具体的に顔認証にはどのような技術が使われているのでしょうか?

2D顔認証から3D顔認証、そして高精度の2D認証へ

顔認証の技術は日々進化しています。顔認証は2D画像を使った「2D顔認証」という技術が利用されています。開発当初は技術の精度に課題が多く、平面的に顔を捉える2Dの情報だけでは角度を変えた顔や、表情を変えた顔には完全に対応しきれないというデメリットがあったのです。

現在では、精度の改善を目指し、各方面で技術の開発、研究が行われています。

そのひとつに人の顔を立体的に捉える「3D顔認証」の技術があります。IRカメラ、近接センサー、照度センサー、ドットプロジェクターなどの装置や3Dセンシング技術を駆使し、顔を立体的に捉えて認証を行うというものです。近年ではAI関連技術として知られるディープラーニング(深層学習)のアルゴリズムの利用も行われています。

一方、グローリーではより「高精度の2D顔認証」を追求し続けています。一見、顔を識別するには平面よりも立体の方が情報量は多く、照合の精度が上がるように思えるかもしれませんが、そうではありません。2017年2月には独自のアルゴリズムを確立し、格段に精度を向上させた顔認証の技術開発に成功しています。

その顔認証の技術とは、顔の2D画像から斜め顔、上顔、下顔などあらゆる角度の顔を自動的に推定できるというもの。つまり2Dのカメラ画像だけで、まるで3Dカメラで撮影したかのような角度変化に強い顔認証を実現するのです。

この画期的な技術により、防犯・監視カメラ、モニタリングカメラなどで、歩いて通り抜ける人たちを撮影し、顔を検出。その中から特定の個人を照合・識別することが可能になりました。具体的には、ホテルに来訪したVIP、店舗に訪れた万引き犯の検知、病院での見守り患者の離院予防などに役立っています。

幅広い分野で簡単に導入できる顔認証システム

ここまで紹介した事例を読んで、顔認証システムを導入したいと考えるようになった方もいるかもしれません。来訪者検知システム、入館管理システム、保育所や病院での見守りシステムなど、さまざまな分野で顔認証技術が活用されています。

ただ、企業の入退室管理など多くの人の顔データとの照合を必要とする場合には、データベースとの連携が必須です。場合によっては大規模なシステムを構築することになるなど、導入や運用コストを負担する必要がありました。

一方で、最近は普及版と言えるようなセットモデル製品も登場し、低コストで、簡単に顔認証システムを導入・運用できる環境が整いつつあります。また、クラウドを利用したサービスなど、ネットワークに接続可能であれば機種やOSの区別なく、顔認証機能を簡単に使用できるWeb APIも提供されています。

顔認証の仕組みと特徴、今後の課題

顔認証技術のイメージ

ここで改めて顔認証のメリットを整理し、今後の課題についても考えてみましょう。

顔認証の仕組みと特徴

顔認証は生体認証の一種ですが、指紋認証や静脈認証と違って、センサーに直接触れる必要がありません。非接触で、画像や映像から個人を認証できる点は、顔認証の大きな特徴であり高い利便性を持っているといえます。非接触のため衛生的であり、手に何かを持っていてもハンズフリーで認証が行えます。

またカメラの前に立つだけで、特定の操作を必要とせず認証が完了するため、利用者の利便性向上も期待できます。 さらに物理的な鍵・IDカード・暗証番号などと違って、顔認証は盗難・なりすまし・ハッキングなどのリスクがほとんどありません。これも大きな特徴と言えるでしょう。

顔認証が抱える今後の課題

さまざまなメリットや利便性の高さが評価されている顔認証ですが、2つの課題があります。

1つはさらなる技術の向上です。人と撮影するカメラ(センサー)の距離が離れるほど、どうしても顔認証の精度は落ちてしまいます。顔の一部しか見えていなかったり、人の動きが激しかったり、変装や化粧、強い日差しによる顔の変化などの状況下でも、精度を高く保つためには更なる技術開発が必要になってきます。

そしてもう1つはデータの保護です。顔認証システムが捉える顔データは個人情報の一種。利用者の理解が必要ですし、収集したデータの漏洩防止にも努めなければなりません。

たとえばデータ保護の具体的な対策として、グローリーの顔認証システムでも、データの暗号化やアクセス制限などの機能が提供されています。このように、よりきめ細かなセキュリティを実現できるシステムでなければ顔認証を利用することはできません。

顔認証の課題について、今後も十分な議論を尽くし、解決に向け取り組むことが求められています。同時に、技術力の向上のみでなく、データを適切に保護するための法整備やそれに対応するシステム開発など、日々研究が進められています。

グローリーの顔認証システム

グローリーは、通貨処理機メーカーとして培ってきた認識技術を生かし、生体認証技術の研究を推し進め、2003年には顔認証技術が他の生体認証の精度にも劣らない実用化レベルを実現しました。それ以降も、顔認証システムを含む生体認証システムの研究開発と普及に取り組んでいます。

なかでも認証精度における技術力は業界トップクラス。解像度の低い画像や、サングラス・マスクなどの服飾品、経年変化、照明環境などの影響下でも性能が低下しにくく、安定した顔認証ができる独自技術を有しています。

その技術をもとに、グローリーではさまざまな機関とともに共同研究を進め、より高度な生体認証システムの開発に取り組んでいます。

たとえば、2019年6月には、順天堂大学などとともに、顔認証技術を認知症などの早期発見・治療に生かす研究を開始すると発表しました。表情や話す言葉を数値化することで、それをもとに早期発見や進行度合いがわかるようなシステム構築を目指しています。

近い将来、顔認証はもっと日常的なものになり、これまでになかったような新しい利用シーンも増えるでしょう。私たちの暮らしのすぐそばで、グローリーの顔認証システムがさらに活用されるようになるかもしれません。